カール・シュミット〜ナチスによる憲法破壊を手伝った男

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昨日、改正公職選挙法が成立し、選挙権が18歳以上の男女に与えられることになりました。この記念すべき日に、新しく有権者になるみなさんに向けて、お話したいことがあります。

「アクラマチオ」という言葉を知っていますか?「大衆の拍手喝采」のことを言います。この「アクラマチオ」という言葉を最も効果的に使ったのが、ドイツの法学者カール・シュミットでしょう。

1920年代のドイツ、それは、第1次大戦の敗戦、ドイツ革命による帝国の崩壊、重い戦後賠償、経済の大停滞による失業や倒産とハイパーインフレによる国民の生活破壊、そして誇り高いゲルマン民族の誇りの喪失…、こういった状況で、革命によって成立したワイマール共和国政府は、与野党の攻防による議会の膠着状態によって、重要にして緊急の政策も議会を通過することができず、いわば「決まらない政治」が続いていました。

こうした中、大衆は、何か新しいこと、明るい断片を求めていました。そこに登場したのがナチスです。ナチスは、ドイツ民族の誇りに訴えかけ、巧みに大衆を扇動、誘導し、比例代表制だった国会議員の選挙でどんどん当選者を出して、ついに政権を掌握、そして独裁体制を確立し、侵略戦争へと突き進みました。

これらはヒトラー独りでできたことではありません。ヒトラーは、いちおうは合法的に、つまりドイツ国民の支持を受けてこういったことをやってのけてしまったのです。

カール・シュミットは、このワイマール政府下の「決まらない政治」に業を煮やし、「政治的なものの概念」というテーゼ(テーマ)を掲げました。そこでは、要するに、政治においては人道主義や自由主義は、決断の邪魔になるだけであり、究極的には、敵か友かの選択しかない、敵に対しては徹底的に抗戦するとともに、友に対しては、100%の同質化を求める、これが政治だ、というわけです。

とすると、議会においても、多数決などということはありえない。100%の信任か、あるいは否認か、この二つである、ということになり、民主主義というのは、無責任な制度だ、と主張して、「大衆の拍手喝采(アクラマチオ)」による独裁制こそ正しく素晴らしい、と、ヒトラー、ナチスに協力しました。

ワイマール憲法は、社会権を世界で初めて規定したりした素晴らしい憲法でしたが、ナチスが政権を取った後、停止され、破壊されました。

当時ドイツは、法の起源は、議会における法律だけ、という法実証主義、また、議会で成立すればそれは内容が誤っていても法であり、議会制定法さえあれば人権を制限できるという、形式的法治主義という考え方をとっていました。こういうわけで、法が人権侵害や民主主義を否定することを止めることが出来ませんでした。しかし、最も致命的だったのは、ドイツ国民自身が、ナチスを支持し、それを許してしまったことにあります。カール・シュミットは、それに理論的な根拠を与えてしまったといえるでしょう。

憲法や民主主義の否定は、結局は独裁を引き起こし、人の支配を引き起こします。そして、人権侵害を引き起こします。こういう政治家に「アクラマチオ」を送らないように、私たちは、この教訓から学ばなければなりません。

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