第3回目の法の支配と法治主義(3)です。
今回は、現代における法の支配と法治主義を解説しています。
今回も教科書や参考書にはなかなか書いてないことも多く入れました。
それで、大変申し訳ないのですが、内容が盛りだくさんで10分を超えてしまいました。
2つに分けたらいいかもしれませんね。後日2つに分けるかもしれません。
まあ、とりあえず見てみてください。
内容は、基本的なものから始めて、高度なものまで言及しています。
早稲田や一橋などの難関大受験生にも参考になることを多く説明しています。
初心者の方もやはり最初から、しっかりとこういうことを覚えておくと、いろいろな制度を
勉強するときに大変役立ちますので、頑張って自分のものにして下さい。
初心者の方は、復習チェックを最初に見て覚えるようにしたらいいと思います。
そのあとじっくり書き起こしを読んで理解するようにしたらいかがでしょうか。
そしてあとは繰り返し動画を見て復習を何度もしてください。

<書き起こしです>

ここまで、勉強したように、戦前の法治主義は法実証主義を基礎に持ち、悪法も法であることを認めましたが、これは形式的法治主義と呼ばれます。

この、形式的法治主義は、ナチスによる憲法破壊と人権侵害をもたらしました。

そこで、第二次世界大戦後のドイツでは、ナチズムに対する反省から、実質的法治主義が生まれました。

実質的法治主義は、自然法を認めず、法の起源を国会の制定した法に求める点では、戦前の法治主義と変わりがありません。

しかし、戦前の法治主義と違うのは、国会の作った法律が、基本的人権を定めた憲法に基礎を持っていなければならないことを認めた点です。

つまり、法の形式だけでなく、内容の適正も要求する立場が、実質的法治主義です。この場合の法の内容の適正とは、憲法に適合していることを意味します。

そこで特にドイツでは、法律が憲法に適合してるかどうかを「憲法裁判所」という、通常の裁判所の系列でない、特別裁判所で審査するという違憲審査制度を導入しました。

そしてこの審査は、憲法をめぐる人権侵害事件が起きる前に、法律制定後すぐに憲法裁判所に法律の条文が送られ、条文の文言を抽象的に審査する、という形で行われます。

ここにおいて、戦前の法治主義を形式的法治主義というのに対し、この戦後の法治主義は、その機能において、法の支配とほぼ同じとみなされ、実質的法治主義と呼ばれることになったのです。

法の支配のことを、実質的法治主義と呼ぶ先生がいると思いますが、やはり私たちはしっかり区別しましょう。機能においては、法の支配とこの実質的法治主義は同じものですが、成立の過程が全然違いますからね。

現代の法の支配は、やはり自然法を基礎においています。

しかし、現代の法の支配は、特に、自然法から導き出された「個人の尊厳」ということを究極の価値としています。

そして、この「個人の尊厳」というのは、個人が最高の価値を持っていることを意味しますが、なぜ、個人が最高の価値を持っているのでしょうか?

それは、個人が、「なりたい自分になれる自由」を持った存在であり、「自分のことは自分で決めることができる」存在だからです。前者を「自己実現の価値」と呼び、後者を「自己統治の価値」といいます。そして、自己実現の価値を重要視する考えは自由主義と、自己統治の価値を重視する考えは民主主義と、それぞれ結びつきます。

法の支配の究極的な目的は、この自由主義、民主主義と直結する「個人の尊厳」を守ることなのです。

そのために、人権の永久不可侵性を憲法で定め、その憲法を最高法規、つまり、法律の中で最も効力の強い法律とし、憲法に反する法令を無効とする、というしくみをとっています。

また、刑罰など、国家権力によってやむを得ず人権制限する時には、内容が憲法に沿った適正な法律で、その手続を定めなければならないことになっています。これには、裁判を受ける権利や罪刑法定主義なども含まれています。これらは、国家権力が好き勝手に人権制限できないしくみとして、法の支配の表れのひとつに数えられます。

そして、忘れてはならないのが、通常の司法裁判所に、憲法を守り、人権を守る最後の砦の役割を法の支配は与えている点です。
普段目に見えない自然法は、一部が判決としてあらわれるのでしたよね。つまり、自然法を発見する機関である通常の司法裁判所が、人権侵害するような法律を憲法に反していると宣言することで、人権侵害を止めさせる役割を果たすのです。
ドイツのような特別なひとつの憲法裁判所だけに違憲審査をさせている実質的法治主義と比べると、法の支配では、アメリカや日本の場合、通常の司法裁判所が違憲審査権を持っている点が特徴的です。

ちなみに、成文憲法のないイギリスは従来、違憲審査権もなく、貴族院と最高法院も未分離でしたが、2009年に最高裁判所が新設され、ヨーロッパ人権条約に照らして、イギリスの議会の作った法律が、適合しているか否かを審査する権限が付与されました。これも、法の支配の現代的表れといってよいでしょう。

もちろん、日本国憲法においても、法の支配は表れています。

個人の尊厳に究極の価値を置き、その尊重を定めている13条、人権の永久不可侵性を定めている97条、また、日本国憲法を、国の最高法規としてこれに反する法令の無効を定めている98条、適法手続きを定めている31条、そして、国家権力の実際の担い手である公務員に、憲法尊重擁護義務を課している99条、最後に、司法裁判所に違憲法令審査権を与えている81条などです。