こんにちは、ブー子です。
こんにちは、テッドです。
テッド今日は何のお話?
今日はね、中国の人民元が、IMFのSDRに採用されることになったというお話だよ。
IMF?SDR?何それ?
IMFっていうのは、International Monetary Fundの略で、日本語では、「国際通貨基金」というよ。
通常1年未満の短期資金を国に貸すという仕事をしている一種の銀行だよ。
それから、SDRというのはね、Special Drawing Rightsの略語で、日本語では、「特別引出権」というよ。「特別引出権は」1968年頃に設けられたもので、イギリスのポンド、ドイツのマルクとフランスのフラン(現在はユーロ)、日本の円、そしてアメリカのドルの4種類のどの通貨建ての資金でも融資を国家が受けられる権利のことだよ。
そのSDRの通貨に、人民元が追加で採用されることになったってことね?
いつから?
来年の10月からだって。
へえ〜、SDRって、何でできたのかな?
それはね、ドルの国際通貨としての信用度の問題と関わりがあってね、戦後の国際政治経済を理解する必要があるんだ。
じゃあ、その国際政治経済っていうのを教えて?
話すとちょっと長くなるけど、いいかな?
いいわよ、早く教えて!
1.ブレトン・ウッズ体制
第二次世界大戦末期の1944年、アメリカのブレトン・ウッズというところに、連合国45カ国の代表が集まって、戦後の世界金融体制をどうしようかと話し合ったんだ。
これが、ブレトン・ウッズ会議だね。
この会議で、戦後の自由貿易を支えるため、為替相場の安定や発展途上国の援助などの目的に、2つの国際金融機関の設立が決まったんだ。
これが、IBRDつまり、International Bank of Reconstruction and Development、日本語では、国際復興開発銀行(世界銀行)、と、IMFつまり、International Monetary Fund、日本語では、国際通貨基金だね。
IBRDとIMFは、どんなお仕事をしてるの?
IBRDは、戦後の発展途上国にインフラ整備のための長期融資を行う銀行だよ。日本も、新幹線を作る時に、IBRDからお金を借りたんだよ。それを返し終わったのは、1990年だから、約30年の間お金を借りていたことになるね。
IMFは、どんなお仕事をしてるの?
IMFは、主に為替の安定のために、国家に対して主に1年未満の短期的な融資をする機関だよ。
この2つの銀行が、設立されたんだよ。
それから、決まったことのもう1つは、アメリカが当時世界一金の保有高が高い国だったので、金とドルをいつでも交換できることにしてドルを国際通貨にし、金1オンス(約31グラム)=35ドルとして各国の通貨とドルの交換レート、つまり為替レートを固定させようということだよ。日本円は、1ドル=360円だったよね。
こうして、金ドル本位制と固定相場制が成立したんだ。
IBRDとIMFという銀行がドルを供給して、金とドルとの交換を背景に世界通貨として流通させ、為替の安定を保つという体制が、ブレトン・ウッズ体制だね。
そのブレトン・ウッズ体制とSDRとどんな関係があるの?
もうちょっと、我慢して聞いてね。
2.東西冷戦とドル危機
こうして、出発したブレトン・ウッズ体制だけど、ソ連を中心とする東側社会主義諸国との冷戦状態が生まれたことから、アメリカは、発展途上国などが、ソ連の味方にならないように、資金援助や軍事援助、それから、局地的な戦闘などのお金がたくさん必要になって、その都度、ドルをたくさん刷ったんだ。
何だか、今の日本銀行がやってることに似てるわね。そして、どうなったの?
さすがに、そんなにたくさんドルが出まわって、ちゃんと金と交換してもらえるだろうか、って世界中が心配になっちゃって、今のうちに、金と交換しちゃおう、ってことになって、アメリカから金が大量に海外に出て行っちゃったんだ。アメリカ政府は、これを防ぐために、いろいろ手をつくしたんだけど、効果がなくて、1971年、ニクソン大統領の時に、金とドルの交換停止を発表することになるんだ。これが、ニクソン・ショックとかドルショックとかいうものだね。これで、ブレトン・ウッズ体制は終わりになる。その後は、スミソニアン体制、さらに、キングストン体制というものに変わっていくけどね。
そうなったら、ドルの信用が落ちて、IBRDやIMFの融資もうまくいかなくなるんじゃない?
その通り!ブー子鋭い!
そこで、実質的にドルの信用が地に落ちてしまっていた1968年に、IMFでは、主要国の通貨ならどれでも融資出来る権利、特別引出権というのを導入決定したんだ。事実上通貨みたいな役割をしている、これが、SDRだね。
なるほど!そういうことだったのかあ〜!
SDRっていうのは、通貨みたいなものって言ったけど、その価値なんかはどうやって決めるのかな?
それはね、「標準バスケット方式」って言ってね、昔は世界の主要な16通貨を基準に価値が決められていたんだけど、1981年以降は、輸出量が、世界上位5位以内のIMF加盟国の通貨を基準に決められるようになり、以後5年ごとに、その構成通貨を見直すってことになったんだ。
でも、中国の人民元は、5年前より、もっと前から、輸出量では世界5位以内に入っていたんじゃない?
そうだね、SDRの構成通貨にするかどうかを決める基準として、輸出量ともう1つの基準、つまり、「取引が自由に出来るか」というのがあって、人民元は、当局の規制が厳しく自由に取引できなかったから、5年前は、SDRの構成通貨入りは見送られていたんだ。
でも、近年、中国の通貨当局は取引規制を緩和したので、2016年10月から、SDRの構成通貨入りが認められることになったんだ。
へえ〜!じゃあ、人民元は、もう国際通貨なのね!
そういうことになるね。
それに、日本円よりSDRの構成割合は多くなるよ。
そうか、いよいよ中国は名実ともに、経済大国の仲間入りってことね。
そうだね。だから、今、人民元は人気があるみたいだよ。すぐに日本円より強い通貨になってしまうだろうね。
なんだか、寂しいような、複雑な気持ちだわ。
ぼくもそうだよ。
中国に望むのは、国際的な金融のルールをしっかり守って、国際経済を支えている自覚を持って責任ある行動を取って欲しいと思うばかりだよ。
そうよね。