
こんにちは、ブー子です。
こんにちは、テッドです。
今日は、安保法案が法律として成立した、というお話よね?テッド。
そうだよ、ブー子。戦後の安保法制の大転換とも言える法案が、ついに法律として可決成立したんだよ。
そもそも、安保法制って何なの?よくわからない・・・
1.今回の安保法制の重要なポイント
まず、戦後一貫して、日本政府は、個別的自衛権の行使は認めるけど、集団的自衛権の行使はできないと言ってきたものを、集団的自衛権の行使を一部認めることにした点が重要だよ。
個別的自衛権とか集団的自衛権ってなんだっけ?
(1).個別的自衛権と集団的自衛権
個別的自衛権というのは、外国に攻められた場合、攻撃されている国が自衛する権利のことだよ。
これは、日本も憲法上認められるよ。日本の場合は、「専守防衛」と言って、日本の領土、領空、領海に外国が侵入して攻撃してきた時にだけ、自衛することができる、とされてきたんだ。
しかし、日本が攻撃されている時だけ、自衛権を行使できるだけで、例えば、外国の船や飛行機が攻撃されても、日本の船や飛行機が攻撃されいない場合は、助けるために反撃することは出来なかったんだ。これは、次に述べる集団的自衛権の行使にあたるとされてきて憲法違反になってしまうので、認められなかった。
集団的自衛権というのは、軍事同盟を結んでいる国々の1カ国でも他国から攻撃された場合に、自分が攻撃されていなくても、同盟国を守るために、武力行使をすること認める権利をいうんだ。
これは、国連憲章の51条で国家に認められた当然の権利というのが、国際的な常識なんだ。
日本は、憲法9条で、「武力による威嚇又は武力の行使」は、「国際紛争を解決する手段としては」「永久に」「放棄する」と言っているので、この集団的自衛権は、国際法上は持っているけれども、認められない、という立場だったんだ。
今回の安保法制の成立で、それが出来るようになるの?
無条件で出来るわけではないんだ。まず、その攻撃が日本に対する「存立危機事態」にあたらなければ、今回の安保法制でも、ダメなんだ。
(2).存立危機事態
じゃあ、その、「存立危機事態」っていうのは何?
「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合のことだよ。
武力攻撃事態対処法を改正して、武力攻撃・存立危機事態対処法で定められたものだよ。
じゃあ、その、「存立危機事態」っていうのがあれば、日本が攻撃されていなくても、武力行使できるの?
あと2つ条件があるんだよ。つまり、
1.我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない
2.必要最小限度の実力行使にとどまる
この、2つの条件が、「存立危機事態」に加えて必要だよ。
そういう条件を誰が判断するの?
そういう事態が生じた場合、まず、国家安全保障会議とそのあと閣議が開かれることになるよ。
何だか、難しいわね!
今回の安保法制で取られる手続きというのは、どんな風になるの?
まずね、紛争が起きた場合、それが、「存立危機事態」なのか、「重要影響事態」なのかの認定が行われることになるね。
国家安全保障会議で、「存立危機事態」の認定が行われ、さっきの他の2つの条件も満たすということになれば、武力行使、つまり自衛隊の防衛出動を内閣が閣議決定し、国会の事前承認を得るということになるよ。
また、「重要影響事態」という認定になれば、やはり閣議決定後、原則、国会の事前承認を得て、後方支援や遭難者の捜索・救護のために自衛隊が出動することになるね。
(3).重要影響事態
また、難しい言葉が出てきたわね。「重要影響事態」って何なの?
「そのまま放置すれば、我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」のことだよ。
今回の安保法制成立前には、「周辺事態」と呼んでいたものに、日本周辺という地理的な制約を外したものだそうだよ。
「周辺事態法」を改正して、「重要影響事態対処法」という法律になったよ。
その「重要影響事態」にあたる場合は、どんな対処をするの?
その場合は、アメリカ軍や国連決議で武力行使が決定された場合に出動する他の国の軍隊と一緒に軍事行動をとるんだけど、
日本は、「存立危機事態」の時とは違い、一緒に武力行使をするわけではなくて、武器弾薬や食料や燃料の補給という後方支援や、海上にある爆弾(機雷)のために船が通れない場合はその除去をしたり、
戦闘が行われた後に、遭難したり、怪我をしたりたりした兵士や民間人を捜索・救護したりすることになっている。
(4).グレーゾーン事態
存立危機事態には該当しないけど、海上保安庁では対応できないような事態をグレーゾーン事態というんだ。
具体的には、外国軍艦が領海に侵入した場合、尖閣諸島などの離島に中国などの武装漁民が不法に上陸して占領した場合、公海上で民間船舶が攻撃されたというような場合だ。
これらの事例では、自衛隊の迅速な出動のため、電話による閣議決定を認めたよ。
あとさあ、国際平和支援法っていうのはなあに?
(5).国際平和支援法
それはね、今まで、PKO協力法に基づくもの以外の自衛隊の海外派遣については、その都度、国会で特別法を作って、自衛隊の派遣と活動を認めてきたんだよね。例えば、イラク復興支援特別措置法とか、テロ対策特別措置法とかね。
これは今回の「存立危機事態」や「重要影響事態」に至らない場合でも自衛隊の出動を例えば国連から要請されたような場合に備えようというものなんだ。
うん。
そういう場合、いちいち国会で審議をして自衛隊の派遣決定するのは迅速な対応が出来ないこともあるから、特別措置法を作らないで、恒久的な法律による自衛隊派遣を認めようということで出来た法律なんだよ。
PKO協力法は改正されて残るけど、この「国際平和支援法」が新たに制定されたことで、新しい国際平和貢献活動に発展したと言っていいよ。
ふうん、これについては何にも問題はないの?
今までは、外国の軍隊に弾薬の供給をすることは認められていなかったんだけど、弾薬を含めた物資の供給ができるようになっているよ。
あと、避難民などの駆けつけ警護と、宿営地などの共同防衛も行えるようになるよ。
弾薬の補給って、軍事作戦の一部よね。そんなことしても、いいのかな?
国際的には、物資の供給全部が軍事作戦の一部になっているんだよ。これを兵站(ロジスティックス)というんだ。
う〜ん、なんだかわかりにくいわね。ちょっとまとめるから聞いてね。
まず、「存立危機事態」に認定されたら、自衛隊が武力行使のために出動して、アメリカ軍が攻撃されていたら、自衛隊が攻撃されていなくても武力行使できる、っていうことよね。これが集団的自衛権行使の一部容認ということかしら。
そして、「重要影響事態」に認定されたら、自衛隊は武力行使はしないで、国連決議で武力行使が決定された場合に出動するアメリカ軍や他の外国の軍隊の後方支援や遭難した人を助けるっていう役割を果すっていうことよね?
さらに、「グレーゾーン事態」については、上に挙げた3つの事例については、迅速に自衛隊が出動できるように、電話による閣議決定を行えるようにしたんだよね?
それから、国際平和支援法で、重要影響事態でなくても、外国の軍隊に弾薬や燃料なんかの物資を供給したり、駆けつけ警護や共同防衛のために、いちいち特別な法律を作らなくても、自衛隊が海外に派遣できるっていうことよね?
こういう理解であってる?
ブー子、よくわかってるね、そういうことだよ。
日本が攻められる事態になった場合、国民はどうなるの?
2.存立危機事態下の国民
そうだね。それは、「国民保護法」という法律に詳しく書いてあるよ。
まず、存立危機事態の警報を国が発して、都道府県知事に対して避難指示を出すよ。
それから、国、都道府県や市町村は、住民が所有している土地や建物を使用したり、収用したり出来るよ。
例えば、丘の上に立っている民家を取り壊して、大砲を据え付けたりできるんだ。
もちろん、それによって生じた損失は補償されるけどね。
あと、国民は、協力を求められた時には、出来る限り協力しなければならないよ。
そして、国や都道府県、市町村は、その際に、日本国憲法で認められている基本的人権を尊重しなければならない。
つまり、強制にわたることはないと決められている。
また、国民が協力して死亡したり怪我をした場合は、補償することも決められている。
その他、運送事業者には避難物資や避難民の運送をしてもらったり、報道機関には報道規制もあるよ。
そういう細かいことがちゃんと決まってるのは、安心だね。
まさかの時に備えておくのは大切だね。
でも、こういうことが起きないように祈るばかりだね。
そうだね。
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